【断層映像研究会雑誌 第46巻 第3号  2020年1月】
      症例報告
・診断に苦慮した多発性骨髄腫の肝浸潤の1例  中神 佳宏、他(2020年1月24日)
    症例報告
・18F-FDG PET/CT が診断に有用であった補助人工心臓埋め込み後のドライブライン感染の一例
    中神 佳宏、他(2020年1月24日)
    原著
・歯突起周囲に生じる石灰化についての検討  近藤 哲矢、他(2020年2月20日)
     
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症例報告

 

診断に苦慮した多発性骨髄腫の肝浸潤の1例

中神 佳宏1)、三須 陽介1)、日下 めぐみ1)、谷口 賢哉1)、
三谷 絹子2)、大日方 謙介3)、黒田 一3)、楫 靖1)

1)獨協医科大学 放射線医学講座
2)獨協医科大学 血液・腫瘍内科講座
3)獨協医科大学病院 病理診断科


 

抄録
 症例は70 歳代、男性。主訴は体力の低下。近医を受診し、糖尿病、高ガンマグロブリン血症、肝門部腫瘤を指摘され、当院へ紹介受診となった。
 高ガンマグロブリン血症に関しては、骨髄生検にて多発性骨髄腫の診断となった。
 MRI の拡散強調像にて、肝門部に約9cm 大の異常高信号域が認められた。T2 強調像では周囲の肝実質とほぼ等信号、T1 強調像では低信号を示し、肝内脈管系は保たれていた。18F-FDG PET/CT ではこの異常信号域と一致して強いFDG 集積を呈する腫瘤性病変が指摘された。
 症状に乏しいため約半年間経過観察となっていたが、半年後の18F-FDG PET/CT にて肝門部の集積亢進の範囲が拡大した。悪性腫瘍の可能性を考慮し、肝生検が施行され、多発性骨髄腫の肝浸潤と診断され、化学療法施行。著効し、治療後の18F-FDG PET/CT にて肝の腫瘤性病変の縮小とFDG の集積低下が確認された。
 多発性骨髄腫の肝浸潤は比較的稀とされているが、今回18F-FDG PET/CT 検査の変化が診断の一助となった。肝浸潤のような軟部組織の髄外腫瘤の同定には18F-FDG PET が有益であるとの報告がある。そのため、診断時より18F-FDG PET の施行が推奨されている。髄外腫瘤が最初からあることもあり、また、その存在が予後不良につながるが、他の検査のみではそれが見逃されることがあるためである。
 今回、多発性骨髄腫の肝浸潤の1 例を経験した。これにつき、文献的考察を加え報告する。

Key words :
多発性骨髄腫、18F-FDG PET、骨髄外骨髄腫

  【投稿受付:令和元年12月25日】【査読完了:令和2年1月6日】

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症例報告

 

18F-FDG PET/CT が診断に有用であった
補助人工心臓埋め込み後のドライブライン感染の一例

中神 佳宏1)、三須 陽介1)、鈴木 淳志1)、柴崎 郁子2)、楫 靖1)

1)獨協医科大学 放射線医学講座
2)獨協医科大学 心臓・血管外科学講座


 

抄録
 症例は30 歳代の男性。2 年前に特発性拡張型心筋症の診断で左室補助人工心臓埋め込みが施行された。7ヶ月前に発熱のため受診し、ドライブライン感染の診断で開窓術が施行されている。今回再度発熱で受診し、ドライブライン感染が強く疑われた。ドライブライン感染の範囲について他法では診断がつかず、18F-FDG PET/CT が施行された。
 18F-FDG PET/CT ではドライブライン及びポンプ部周囲にFDG の集積亢進が認められ、感染の範囲の特定に有用であった。
 補助人工心臓におけるデバイス感染の診断において18F-FDG PET/CT 検査は有用であると思われたので、文献的考察を加え報告する。

Key words :
ドライブライン感染、18F-FDG PET、補助人工心臓

  【投稿受付:令和元年12月25日】【査読完了:令和2年1月6日】

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原著

 

歯突起周囲に生じる石灰化についての検討

近藤 哲矢1)、江頭 玲子1)、中尾 允哉2)、
西原 正志1)、江頭 秀哲1)、入江 裕之1)

1)佐賀大学医学部 放射線科
2)佐賀大学医学部 医学科5年次


 

抄録
 日常診療で撮影された頭部CT、頸部CT および頸椎CT 連続1204 例のうち、撮影範囲に軸椎全体を含み、2mm 以下のthin slice で検討可能な症例288 名を対象とし、これらの症例について、歯突起周囲の石灰化の局在や形状、厚み、歯突起自体の変化、随伴する軟部腫瘤形成の有無、頸髄圧迫の有無をCT にて後顧的に評価した。また、CT 所見と臨床情報との関連を検討した。288 名中35 例(12.2%)に歯突起周囲の石灰化を認め[年齢の中央値67 歳(23-93)、男:女= 26:9]、うち60 歳以上が29 例(82.9%)と大部分を占めた。有意な性差はなかったが(p=0. 19)、高齢者に有意に多く認められた(p = 0. 003)。石灰化の局在(水平方向)は、腹側が11 例、側方が21 例、背側が16 例で見られた(重複あり)。頭尾方向では、C1 椎体レベルに石灰化を認める症例が32 例と最も多かった。形状は点状〜結節状が25 例、線状〜帯状が14 例であった(重複あり)。石灰化の厚みは1 〜 6mm[中央値3mm]であった。歯突起自体の変化や随伴する軟部腫瘤形成、頸髄圧迫はいずれの症例でも認められなかった。臨床所見との関連では、有所見者の2 例にのみ頸部痛が見られたが、石灰化の分布や形態との関連はなかった。
 歯突起周囲の石灰化は大部分が無症候性であり、加齢との強い関連が認められた。頸部痛を有し、CT で歯突起周囲に石灰化を伴っていても、必ずしもCDS と診断することは出来ない。

Key words :
歯突起周囲の石灰化、Crowned dens syndrome、CT

  【投稿受付:令和元年8月25日】【査読完了:令和2 年1月23日】

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