【断層映像研究会雑誌 第40巻 第1号  2013年4月〜7月】
      連続講座:断層映像法の基礎 第39回 
・フィルタ補正逆投影法と最小二乗法との関係 篠原 広行、他pdf(3.2M)
     
     

 

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連続講座

断層映像法の基礎 第39回

フィルタ補正逆投影法と最小二乗法との関係

篠原 広行1)、小島 慎也2)、中世古 和真3)、橘 篤志4)、橋本 雄幸5)

1)首都大学東京
2)東京女子医科大学東医療センター 放射線部
3)つくば国際大学医療保健学部 診療放射線学科
4)東京慈恵会医科大学附属病院 放射線部
5)横浜創英大学こども教育学部



はじめに
 これまで本連載の第31回で代数的画像再構成法のART 法、SIRT 法、第32回で統計的画像再構成のML-EM 法などの逐次近似法について述べた。逐次近似法は仮定した画像から計算で投影を作り(順投影)、これと計測した投影との差(比)を求め、誤差分を逆投影し仮定画像を更新する繰り返し計算によって原画像に近づけていく。逐次近似法では画像と投影の関係を表す検出確率が主要な役割を果たす。なお、検出確率という用語は核医学の逐次近似法で用いられてきたが、最近はCT、MRI での逐次近似法が普及しつつあり、システム行列あるいは簡単に係数行列と呼ばれる。そこで、本稿では係数行列と呼ぶことにする。第33回の最小二乗法を利用した画像再構成では、係数行列の階数(ランク)不足(1次独立の行または列が行列の次数よりも少ない)によって通常の方法では逆行列が求められない場合でも、特異値分解によって一般逆行列を求めれば近似的に原画像が復元されることを示した。逐次近似法に対し、解析的画像再構成の代表はフィルタ補正逆投影(FBP)法である。第33回ではフィルタ補正逆投影法と最小二乗法とはどのような関係にあるか触れなかったが、本稿では、係数行列に着目し両者の関係を整理する。
 2006 年頃からCT やMRI において少ないデータからの画像再構成が盛んに研究されている。少数投影からの画像再構成は昔から研究されてきたテーマであったが、近年の情報理論で発達した圧縮センシング(Compressed Sensing:CS)という手法がCT やMRI などの医用イメージングにも導入され、少数投影からの画像再構成が可能になりつつある。CT では少ない投影データから画像ができれば被ばく量の低減につながる。MRI においては少ないk空間データあるいは投影データから画像ができれば検査時間の短縮につながる。そこで、25 年度の連載では、圧縮センシングを利用した画像再構成(CS 法)の基礎となる、少ない投影からの画像再構成、これを実現するための逐次近似法で用いられる共役勾配法などの最適化法、CS 法の紹介を予定している。本稿では、準備としてCS法で用いられる用語のベクトルのノルム、Total variation ノルム(TVノルム)などについて触れる。なお、本稿はやや数式が多い記述となっているが、図や画像なども多くしできるだけ数式の意味をわかりやすく述べたい。

  

 1.線形方程式による原画像、係数行列、投影の関係
 2.最小二乗法による画像再構成
 3.FBP 法と最小二乗法の関係
 4.正則化付き画像再構成
 5.最小二乗法の逐次近似計算

 

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